第19回 中部小児がんトータルケア研究会で「つながる輪」発表

ネット社会にみる患者家族会へのニーズと今後の展開

子どものがん経験者と家族の会 つながる輪
斉藤真光 , 山崎仁美

「つながる輪」代表・斉藤真光(まさみつ)第19回 中部小児がんトータルケア研究会
「つながる輪」代表・斉藤真光(まさみつ)

2019年9月28日(土)に名古屋大学医学部附属病院で開催された「第19回 中部小児がんトータルケア研究会」で、当会代表 まさみつ(斉藤真光)が発表いたしました。

名古屋大学大学院医学系研究科 小児科学 教授 高橋義行先生と国立病院機構名古屋医療センター 臨床研究センター 堀部敬三先生からは「素晴らしい活動」と高い評価をいただき、励みとなりました。ありがとうございます。

今回は日本小児血液・がん学会雑誌に本名が掲載されることから、代表と事務局長・輝く子どもたち@はな(山崎仁美)の名前しか出ていませんが、副代表・まーると代表の奥様にも参加していただき、4人で発表の準備を進めました。

当日は、まさみつ、輝く子どもたち@はなの他に、当会会員・わっふるさんが参加してくださいました。今回はご報告も兼ね、発表内容をまとめましたのでご覧ください。


「ネット社会にみる患者家族会へのニーズと今後の展開」子どものがん経験者と家族の会 つながる輪 斉藤真光 , 山﨑仁美

抄録

小児がんに関する自助グループは、1968年に「がんの子どもを守る会」が設立されて以来、院内親の会が発足するなどしたため各地で広がりをみせた。

昨今インターネットが発達しており、特にSNSが急速に発達している。親の会のあり方やコミュニケーションの取り方も変化している。実際に、親の会設立から10年以上経過した運営者からは「会員が増えない」という悩みをよく聞き、患者家族からは入会に消極的な意見も聞かれる。

この現状に対して当会は患者家族を対象に、小児がん経験者の会・親の会・家族会等(以下、当事者の会)への参加有無とこれからの運営希望についてアンケートを実施し、当会の運営方法の改善を検討した。

有効回答数137名のうち8割が母親であり、治療終了から5年以内が4割、当事者の会に入会している方はおよそ5割であった。当事者の会への入会経験に関係なく、今後どのような活動に参加したいかという設問では「勉強会・講演会」が7割と最も多く、イベントや茶話会などオフラインでのFACE to FACE交流希望が4割超であった。

一方、ネット上での交流希望は2割に留まる結果となった。FACE to FACEでの交流を持ちたいという回答が最多であると同時に、当事者の会に入会していない理由のトップは「病院内など身近に参加できる会がない」であった。これは患者家族が容易に参加できる形でのピアサポートが必要と推測される。

このような現状を踏まえると、患者家族に情報もしくは FACE to FACEでの交流機会を提供するためには当事者の会同士が横の繋がりを広げ、運営者が相互に情報を共有し助け合える仕組みの構築が重要であると考える。その仕組みを用いて小児がん患者家族をサポートする団体、病院及び大学等、従来の枠組みを越えた繋がりにより様々な情報共有を可能にしていきたい。

本報では情報共有を可能にする仕組みについて報告する。

「つながる輪」は何をする会?

「つながる輪」は、仲間と繋がりたくても機会がなかった小児がん経験者とその家族のための会

私たちの団体は、「仲間と繋がりたくてもこれまで機会がなかった」「小児がん経験者やきょうだい、及びその親のための会」です。

小児がんの親3人を中心に結成し、Face to Faceの交流会、インターネット上で活動する掲示板、新聞等を含めたメディア、多方面での活動を視野に結成いたしました。

では、なぜ私たちが数ある団体の中で、新しい団体を立ち上げようと考えたのかご説明します。

「つながる輪」を立ち上げた背景

今の時代に合ったスピード感のある患者家族会が必要なのではないか(第19回 中部小児がんトータルケア研究会)

私たち3人は入院時に付き添い経験があったということから、コミュニケーションから得られる情報が大事だと感じていました。これは患者同士、親同士、もしくは医療者の方々から頂くほんのちょっとした情報で日々の生活が楽になるという実感を得ており、非常に有り難い思いを感じていました。

加えて、同じ病気の人同士、インターネット上にある先輩方のブログ、もしくは専門的な情報等インターネットを通して得られる情報を加えることによって、中長期的なQOLの向上、日々のちょっとしたことのQOLの向上が非常に多くあることを体感しました。

また一方で、皆さんが感じておられるようにインターネットの利用率は非常に高いものがあり、ここ10年ぐらいでスマートフォンの保有率も急上昇しています。スマートフォンの保有が上がるということは、以前よりも病棟や病室で気軽に、すぐに情報を得ることができる状況です。これを踏まえ、今の時代に合ったスピード感のある患者家族会が必要なのではないかと私たちは考えました。

多様性のある患者家族会の活動

多様性のある患者家族会の活動

次に「患者家族会とは」というところに立ち返って考えてみます。患者家族会とは、病気や障害のある子をもつ親たちを主な構成員として組織された団体、相互交流や情報交換を目的として定期的に活動している、子どもとその家族・本人のQOL向上のために活動している、といったことが挙げられます。

このような観点から考えますと、活動が行われる場所(院内・院外)、構成するメンバー(患者本人・親)、目的が交流なのかチャリティーなのかボランティアなのかといった様々なことが考えられ、各団体の目指す方向や目的は当然のことながら多様性があります。

では、このような状況で、患者家族会には何が求められているのかということを実態調査しました。

アンケートを行い患者家族会への要望を調査

アンケートを行い患者家族会への要望を調査

これは患者家族会に対する要望をアンケート調査した結果になります。小児がん患児・経験者とその両親・きょうだい・親戚を対象に調査を行い、入会経験の有無についてはおよそ半々といった結果でした。

このうち現在入会していない方についてどのような理由で入会されていないかをまとめると右のグラフのようになります。

トップの理由が、院内に親の会がない、続いて参加できる会が近くにないことが挙げられ、入会を検討している、疾病別患者会がないといった声もあり、患者家族会への入会に実は関心を持っているけれど今は入っていないという方が潜在的に存在しているように感じました。

また、患者家族会に入会した目的は「経験者の話を聞きたい」「生活に関する情報が欲しい」さらには「専門的な医療情報が欲しい」といったことがトップ3に上がり、経験談や専門的な知識欲が高いということが見受けられます。

また、入会の有無に関わらずどのような活動に参加したいかという問いに対しては「勉強会・講演会」「家族参加型のイベント」「茶話会・ランチ会」「懇親会」と続き、私たちが考えていたインターネット時代におけるより手軽に気軽に交流できるインターネット上での交流というのは比較的少ない状況でした。

一方で、先ほど述べたようなFace to Faceでの交流のほうが、非常に関心が高いということがわかります。アンケート結果については、当会が運営する「手をつなごう。」ホームページをご覧ください。

▼【アンケート結果】ネット社会にみる小児がん患者家族会へのニーズ
[blogcard url=”https://c-cancer.com/matome/21190″]

では、このようなニーズの調査を踏まえまして、我々の団体がすべきことは何かということについて考えてみました。

多様なニーズに応えるために必要なこと

多様なニーズに応えるために必要なこと

それそれのニーズに応じて活動する団体を、スピーディーに丁寧につないでいくことが私たちに求められていると考えました。

各団体いろいろな目的や多様性を持って存在していますので、日々、自分たちが考える達成すべき目標やゴールに向かって活動なさっています。それはまるでパズルのように時には一部がお互いに入り組み合い、強固な関係を築いていくと想像しています。

ただし、当然のことながら、まだ直接入り組んでいない場所もありますので、このようなところに対して私たちが関係を構築または強化できるお手伝いができるのではないかと考えています。

それは、情報発信であり情報収集であり、各団体からの情報が患者や家族の方に届いて、そういった活動が最終的にいろんな情報を知るチャンスを知る創出につながれば幸いだと考えています。

これらを踏まえ、私たちは手始めにコミュニティサイト「手をつなごう。」をオープンしました。また、コミュニティサイトとは別に当会ホームページも作り、交流のある22団体をご紹介しています。

▼小児がんコミュニティ「手をつなごう。」
https://c-cancer.com

▼子どものがん経験者と家族の会「つながる輪」
https://275.c-cancer.com

先ほどのアンケート調査の中でもありましたように、思った以上にFace to Faceでも交流を大事にされている方がニーズとして高いということが挙げられますので、交流会という形でFace to Faceの活動を続けていこうと考えています。

第1回の交流会を東京で開催しまして、20団体の方に参加いただくことができました。様々な病院や団体の垣根を越えて横の繋がりを創出していくことが、私たち団体のやっていくことだと考えました。

「知るチャンスの創出」と「枠組みを超えたつながりの創出」

「知るチャンスの創出」と「枠組みを超えたつながりの創出」

まとめとしまして、アンケートによって要望を確認したところ入会経験がない方にも実は入会に関心を持っている方が潜在的に存在する、インターネット上の交流だけではなくFace to Faceでの交流を希望しているということが挙げられます。

これを踏まえて、私たちにできることは、より多くの人に経験談や交流を持ってもらうために情報発信し続けることが大事かなと考えています。これまでの枠組みを超えたつながりを作っていきたいです。

関連ブログのご紹介

▼名古屋小児がん基金
「中部小児がんトータルケア研究会を名古屋大学医学部附属病院で開催」
https://npcf.or.jp/archives/637

▼輝く子どもたち 小児白血病完治の記録
「第19回 中部小児がんトータルケア研究会で『つながる輪』演題発表」
https://kodomo3.com/blog/wataboushi/3519

2 thoughts on “第19回 中部小児がんトータルケア研究会で「つながる輪」発表

  • 「つながる」というキーワード大事ですね。似た境遇の方が「つながる」ことで情報を得たり助けあえたりできるのは素晴らしいと思います。ありがとうございます。

  • 高橋先生
    返信が遅くなってしまい失礼しました。
    たくさんの活動や人を繋げられるよう、名古屋小児がん基金の活動と共に頑張ります。今後ともよろしくお願いいたします。
    (輝く子どもたち@はな)

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